みなさん、普段どこで洋服を買っていますか?百貨店や駅前の商業施設、また最近では、ネットショップで購入するという方も多いと思います。着るものは私達の生活には欠かせないものですが、その裏にある社会問題はご存知でしょうか?今回は、アパレル業界で問題となっている大量廃棄問題について、学んだことをまとめていきます。まだ勉強不足な部分もありますので、相違のある点などありましたらご連絡ください。
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大量廃棄の現状
現在、日本では年間約29億着の服が供給されているといいます。しかし、驚くべきことにそのうちの約15億着が、一部は袖も通されない新品のまま、焼却処分されているという現状があります。
テレビ東京の番組『ガイアの夜明け』では、廃棄される洋服の処理現場が映されています。今回廃棄される洋服を作った製造業者の方が処理現場でその様子を見ており、商品が処分されることに対して「悲しい」とおっしゃっていました。誰しも、自分が開発に関わってきた商品が、日の目も見ないままに無駄なものとしてゴミのように処分されていくのは見ていて悲しくなると思います。しかし、取引先のブランドとの約束としてブランド価値を下げないために(後述します)、廃棄を行っています。
廃棄される洋服は、最終的には焼却されます。大量の洋服の焼却処分は、二酸化炭素(CO2)の排出も増加させるので環境問題にもつながります。
なぜ、洋服が大量に廃棄されているのでしょうか?
大量廃棄の原因
Photo by Hannah Morgan on Unsplash
供給される数の約半数にも及ぶ数が処分されているのは、なぜなのでしょうか?原因としては
- 余剰や売れ残りが、現状どうしても発生してしまう仕組み
- 廃棄するのがブランド価値を守ることになる
という2点があります。
余剰や売れ残りがどうしても発生してしまう仕組み
原因の1つ目は、アパレル業界ならではの問題により、どうしても余剰や売れ残りが発生してしまうからだといいます。アパレル業界ならではの問題とは何でしょうか?
売れ行きが気候に大きく左右される
Image by Free-Photos from Pixabay
まず1つ目は、洋服の売れ行きが気候に大きく左右されるという点です。梅雨明けの遅延、冷夏、暖冬など近年の異常気象により予想していたよりも売れないということは日常茶飯事です。
例えば、2019年の秋には台風が相次ぎ百貨店や家電量販店など実店舗への客足が遠のきました。それにより、ガイアの夜明けで出演していたメーカーの方は、百貨店用に1万着のセーターを作りましたが、その半分の5000着が売れ残り、返品されたそうです。
店舗在庫を十分確保すべく予め多めに生産する
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2つ目は、店舗の在庫を確保するために、あらかじめ多めに洋服を生産するという点です。大量に廃棄が出るのであれば、生産する量を減らせば良いのでは?と思いますが、もしこれまでの実績から、100%売り切ることができる数のみを生産した場合、どうなるでしょうか?
すべての商品でそれをやっていると、在庫がなくなり追加在庫もなく店舗がスカスカになってしまいます。現状のビジネスモデルでそれをやることは困難です。
ではどれくらい多めに作っているのでしょうか?一般的に、定価で売れる見込み数の、約倍の量を発注しているそうです。そうして売れ残った約半分の衣類が「想定内として」処分されることにつながっていきます。
価格競争によって大量生産型にならざるを得なかった
引用:https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/005_05_00.pdf
3つ目として、多くのアパレル企業が大量生産型にならざるを得なかったという点があります。製造から販売まで自社で一貫して行う製造小売企業の台頭により、アパレル産業において価格競争が起こりました。また、国内の衣料品市場において個人の購入単価指数は大きく下降していきました。
価格競争に巻き込まれた多くのブランドは、商品の価格を下げざるを得ませんでした。利益確保のため、大量生産によるスケールメリットによって、一着当たりの製造費を下げることになったのです。
廃棄するのが企業・ブランドを守ることになる
さて、ここまではアパレル業界が、どうしても売れ残りや余剰在庫を抱えてしまう体質であることを述べてきました。そして、その売れ残りを廃棄することが企業やブランドを守ることに繋がるのですが、それはどういうことでしょうか?なぜ廃棄しなければならないのでしょうか?
売れ残りの保管はコストがかかる
Photo by Toby Stodart on Unsplash
廃棄しなければいけない理由の一つが、売れ残った在庫の保管コストです。いつまでも廃棄をせずに在庫を取っておいたところで、時間が経つごとに流行の波が早いファッション業界で売れる可能性は低くなっていきます。
売れないものを抱えておくのは、企業のお金を無駄遣いしているのと同じです。このコスト削減のために企業は余剰在庫を廃棄をするのです。
安売りによってブランド価値が下がる
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2つ目の理由が、横流しなどによる安売りでブランド価値が下がるのを防ぐためです。2018年には、イギリスのバーバリーが42億円相当の商品を焼却処分したということがニュースで話題になりました。ブランドはある程度までの値引き販売をしていますが、それでも売れない場合は、焼却処分に踏み切ります。市場に格安のブランド品が出回ることにより、ブランド価値が毀損されてしまうと考えるからです。
アパレルの廃棄問題に取り組む企業
そんな中、アパレル業界の大量廃棄問題に取り組む企業も増えてきています。
Colors(カラーズ)
引用:https://fashionoutlet.jp/
Colors(カラーズ)は、売れ残りや小売店から返品された商品など、余剰在庫をメーカーや工場から直接買い取り、最大90%オフで販売しているブランドです。店頭に並んだ洋服を見ると「100円」と書かれた商品も多数並んでいますが、どれも新品未使用。通常であれば百貨店等で売られる品質の高い商品も存在します。
東京と大阪を中心に国内10店舗(2020年4月現在)、海外にも展開しています。大量廃棄されてしまう洋服がもったいない。その想いで創業された会社です。
rename(リネーム)
服の安売りをせず、アパレル廃棄を減らすことを目指し取り組んでいるのがこちらのrename(リネーム)。ブランドの洋服を買い取り、アパレル加工工場で洗濯タグやブランドタグを付け替えて、元のブランド名がわからないようにします。自社の公式ストアでそれを販売しています。ブランド名をなくすことで、ブランドのイメージを通すことなく服本来の価値でお客様に購入してもらえるようになります。
&Bridge(アンドブリッジ)
引用:https://senken.co.jp/posts/world-gordonbrothers-190913
アパレル企業大手のワールドの&Bridge(アンドブリッジ)は、国内外の有名ブランドの服が揃う、オフプライスストアです。オフプライスストアは、アウトレットと異なり様々なブランドから商品を仕入れているのが特徴です。アウトレットストアは、既存の売れ残りが在庫になりますが、サイズや色などを揃えるためにアウトレット用に作られる商品もあります。それに比べてオフプライスストアは本当に売れ残り在庫のみを販売しています。
さいたま市にある&Bridge(アンドブリッジ)の店舗では、2ヶ月で1万2千点の商品を売り切るといいます。高級な商品が定価より大幅に安く購入できるのに比べて、宝探しの感覚で商品を探すのも楽しそうです。
まとめ
今回は、アパレルの大量廃棄問題の現状や原因、そしてそれに取り組む企業をまとめてきました。しかし、大量生産されたものに対する対処療法的な取り組みは多い一方、根本的に問題を解決するような取り組みはあるのでしょうか。また、別の記事で考えたいと思います。
- テレビ東京 ガイアの夜明け『追跡!余った服の行方』 2019/01/28 放送
- 杉原淳一・染原睦美『誰がアパレルを殺すのか』日経BP 2017
- BBC News Japan 英バーバリー、42億円相当の売れ残り商品を焼却処分
- 経済産業省 平成28年 アパレル・サプライチェーン研究会 報告書 参考資料集
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