フードロス(食品ロス)という言葉は聞いたことがある方も多いかもしれません。フードロスとは、本来食べられるにも関わらず食品が廃棄されることを指します。今回は、そんなフードロスの現状や原因、問題点や取り組みについてまとめていきます。
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日本のフードロスの現状
引用:国連広報センター
SDGsのターゲットの1つとして採択されたことから、国際的にも関心が高まっているフードロス問題ですが、日本の現状はどうなっているのでしょうか?
大量に廃棄されるコンビニの恵方巻きがSNSで話題になったことから、フードロスのことを知った方も多いかもしれません。日本では、年間約2,550万トンの食品廃棄物等が出されており、そのうちまだ食べられる「フードロス」は毎年約600万トンにのぼります。これがどれくらいの量かというと、大型トラックが毎日1700台分必要になる量だといいます。
2017年度は、フードロスは612万トン、そのうち事業系のフードロスが328万トン(約53%)、家庭系のフードロスが284万トン(約46%)となっており、なんと家庭からのロスが半数近くを占めています。消費者庁は、2012年度以降フードロス量の推移を計測してきましたが、2017年度は計測を始めて以来最小 となりました。
フードロスの原因:なぜフードロスが出る?
環境省の区分を参照 すると、フードロスには3つの発生区分があるとされています。食品が調理されずにそのまま廃棄される「直接廃棄」、食品が加工・調理された後に廃棄される「食べ残し」、そして加工時や調理時に食べられる部分を廃棄してしまう「過剰除去」です。
直接廃棄
まずは、私達消費者の手に届く前段階の話です。野菜には、市場で決められた規格(サイズや品質)があり、味が問題なくても形が悪ければスーパーに並ぶ商品にはなりません(最近では、規格外野菜を置くスーパーも増えてきましたが)。このような規格外野菜は農家で消費されるか、食品加工用に使用されます。それでも余ったものは廃棄されてしまい、その量は一説では生産量の約40%にのぼるとも言われています 。
また、私達消費者の手に渡ってからも食品は意外と廃棄されています。上述したように、意外にも家庭系の食品ロスは46%にものぼっていることがわかりました。それは例えば、購入後に冷蔵庫の中で存在を忘れてしまい賞味期限が過ぎてしまう、忙しくて料理をする暇がなく腐ってしまうなど様々な理由があると思います。
食べ残し
食べ残し、はほとんど誰にでも経験があることから想像しやすいのではないでしょうか?外食に行くと特に、一皿の量や内容を変更できない場合が多いですよね。嫌いな物が入っている、量が多いなどで残してしまった経験がある方も多いと思います。家庭でも、一人暮らしをしていてつい作りすぎてしまい食べきれずに捨ててしまうということもあるでしょう。
また、加工品も多くの廃棄が出ています。加工後の廃棄は「食べ残し」に分類されているのでこちらで説明します。加工品などで問題となっているのが3分の1ルールというものです。
3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする商慣習的なルール
引用:日本もったいない食品センター『日本の食品ロスの現状 』
つまり、賞味期限まで残り3分の1の期間残っているものでも廃棄の対象となってしまうのです。
過剰除去
過剰除去、というのは例えば、大根の葉っぱやブロッコリーの茎など食べられる部分を捨ててしまう、スーパーの店頭でキャベツの外側の葉を剥がしていくなどがあります。全国各地でこのような廃棄が行われていればものすごい量になりそうですよね。
いずれも、食べる部分ではないと思っている、食べられることは知っているけど汚い、農薬がついていそうといった衛生の観点から捨てる方もいます。
さらには、果物の皮に多く実がついたまま捨ててしまうなど料理の腕によって起こるフードロスもあります。
フードロスの問題点:フードロスの何が問題?
毎年かなりの量のフードロスが発生していることはわかりました。また、フードロスが発生する原因もわかりました。では、なぜそのフードロスを減らす必要があるのでしょうか?「もったいない」からでしょうか?「もったいない」だと少し漠然としているので、もう少し詳しい理由を見ていきます。
環境負荷の増大
捨てられた食品のその後を考えたことはありますか?例えば、家庭で捨てられたものは燃えるゴミとして焼却施設に運ばれ、燃やされます。そしてその焼却に伴って、気候変動の原因となる二酸化炭素の排出が増加します。
また食品ができあがるまでには、原料の調達から輸送、加工調理などその過程で多くのエネルギーを使用し、二酸化炭素を排出しています。しかし、せっかく二酸化炭素を排出してまで作ったものが、本来の目的である「人に食べられる」を達成せずに、そのまま廃棄されるとエネルギーの無駄になります。食品を廃棄することは気候変動へ加担しているということになります。
経済的損失
フードロスの問題点は、環境面だけではありません。廃棄された食品は、燃えるゴミとして焼却になると書きました。焼却をすることによって、本来必要のない廃棄コストがかかってしまい、それらは私達の税金で賄われています。
また、日本の食料自給率は約38%(2016年度・カロリーベース)で、食料品の多くを海外からの輸入に頼っていますが、その多くを廃棄しているとなると、無駄なコストをかけていることになります。
資源配分の課題
2015年の国連の報告書によると、世界では約8億人もの人々が飢餓や栄養不足に陥っていると言います。また、日本でも約7人に1人の子供が相対的貧困状態にあるとされています。そんな状況の中、一部では物が過剰に供給されているのに対して、本当に必要な人々のところへは届いていない、という現状があります。
世界全体での食料廃棄は年間13億トンと言われており、それは人間の食用のために生産された食料のうちの3分の1に当たるとされています。
取り組み
これまで述べてきたような食品ロスの現状に対して、様々な取り組みがなされています。
行政の取り組み
食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)は、2001年に施行され2007年に改正されている法律です。①発生抑制と減量化による最終処分量の減少、②飼料や肥料等への利用、熱回収等の再生利用 に関しての基本方針を設定し関連業者の取り組みを促進する役割があります。
また、2019年には、食品ロス削減推進法(食品ロスの削減の推進に関する法律)が施行され、①国民各層がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくよう、食べ物を無駄にしない意識の醸成とその定着を図っていくこと、②まだ食べることができる食品については、廃棄することなく、できるだけ食品として活用するようにしていくこと とし、国民運動として食品ロス削減に取り組んでいく姿勢を見せています。
また、上述した3分の1ルールに対しても見直しがなされています。2013年に行われたパイロットプロジェクトでは、納入期限を従来の商慣習である3分の1から2分の1に変更したところ、弊害なく廃棄率が削減されました。このことから、農林水産省と経済産業省は特定の飲料や菓子において納品期限の緩和を事業者に依頼しています。
企業の取り組み
企業側の食品ロス削減については、どうしても廃棄が出てしまうのは避けられないとも考えられます。特に飲食店のように、その日の客数や売上の予測に基づいて食材の発注が行われている場合、100%正確な数を仕入れるというのは難しいのではないでしょうか?また、機会損失を考えると、少し多めに仕入れておくというところも多そうです。
そんな中で企業の取り組みにはどんな物があるのでしょうか?一つには、より保存期間を長くできるような技術的な努力がおこなわれています。例えば森永乳業は、無菌下での充填・包装により保存料や防腐剤なしで常温で60日間保存できる牛乳 を開発しました。
また、後述するフードバンク活動へ参画している企業もあります。また、味の素を始めとした食品メーカーは、賞味期限を年・月・日の表示から年・月の表示に切り替える 、気象データを活用して売れ行きを予測し過剰在庫などを防ぐ 等の取り組みを行っています。
NPOの取り組み
上述したように、NPOによるフードバンク活動も行われています。この活動に協賛している企業も多く、企業や飲食店・家庭から集められた食品は、生活困窮世帯や福祉施設へと提供されています。
また、買い取った食品を店舗で販売し、その売上の一部が困窮世帯への支援金になるという団体もあります。日本では7人に1人の子供が相対的貧困状態であるとされていますが、このフードバンク活動は、食品ロスの問題である資源配分のギャップを埋める役割を担っています。
私達にできること
それでは、私達一人ひとりができることはなんでしょうか?以下にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
家庭でできること
- お得だからといって、買いすぎず、必要な量だけ買う
- 忙しくたまにしか自炊をしない人は、食材を冷凍保存しておく
- 買い物の前に、冷蔵庫にある食材を把握しておく
- 食べられる部分を過剰除去しないようにする
- 古い食材から使い切る
外食でできること
- 食品ロスに取り組んでいるお店を選ぶ
- ハーフサイズなど食べ切れる量を注文する
- 外食で残してしまったら、持ち帰れるか聞いてみる
- 飲み会では、「食べきりタイム 」を設ける
その他
- 余った食品はフードバンクへ寄付をする
身近なところから食品ロス対策を始めよう
日々捨てられている食品の量はとても大きな数字になりますが、大切なのは一人ひとりが食品ロスを意識することだと思います。最初に述べたように、食品ロスのうち約半数が家庭から出ているという現状です。できることから始めていきたいですね。
- 消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」(閲覧日:2020/06/03)
- 消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」(閲覧日:2020/06/16)