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本当にエシカル?オーガニックコットンの良い点・悪い点

オーガニックコットンの綿と枝

買い物をする際にも聞き慣れるようになった「オーガニックコットン」。しかし、なぜオーガニックコットンがいいのだろう?そう思っている方もいるかもしれません。結論から言うと、従来のコットンと比較してオーガニックコットンは農薬使用による農家の健康被害を抑えられ、土壌の劣化や水質汚染を減らしますが、水資源の使用量については問題がある可能性があります。今回の記事では、その理由をまとめていきます。

オーガニックコットンとは?

オーガニックコットンのコットンボールPhoto by @dietitian.mama on Unsplash

そもそも、オーガニックコットンとは何でしょうか?多くの方が勘違いしているかもしれませんが、従来のコットンと比較してオーガニックコットンは品質が高いというわけではありません。オーガニックコットンと従来のコットンの違いは、その栽培方法や加工工程にあります。

オーガニックコットンの定義を、NPO法人日本オーガニックコットン協会さんのサイトより引用します。

オーガニック農産物等の生産方法についての基準に従って2 ~ 3 年以上のオーガニック農産物等の生産の実践を経て、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことです。オーガニックコットンは、紡績、織布、ニット、染色加工、縫製などの製造工程を経て最終製品となりますが、この全製造工程を通じて、オーガニック原料のトレーサビリティーと 含有率がしっかりと確保され、化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑え、労働の安全や児童労働など社会的規範を守って製造したものを、オーガニックコットン製品といいます。

引用:http://joca.gr.jp/main/what-organic-cotton/

つまり、2~3年は農薬等の厳しい基準を守って農作物を栽培した、認証機関によって認められた農地で育てられたコットンのことをオーガニックコットンと呼んでいます。

従来のコットンとオーガニックコットンの生産量のグラフ引用:https://textileexchange.org/wp-content/uploads/2018/11/2018-Organic-Cotton-Market-Report.pdf

上記の図は、アメリカの非営利団体Textile Exchangeのものですが、従来のコットンの生産量とオーガニックコットンの生産量の推移が示されています。「Conventional(紺色)」=従来のコットンで、「Organic(緑色)」=オーガニックコットンを示しています。

これを見ると、最新の2016-17年、世界中で従来のコットンの生産量は大体23,000,000MT(メトリックトン)。対してオーガニックコットンの生産量は大体120,000MTです。2016-17年の1年間でオーガニックコットンの生産量は前年比で約10%の伸びを見せたと報告されていますが、それでも世界全体でのコットン生産量のうちの1%にも満たないということがわかります。

その他に気になる点として、オーガニックコットンの生産が2009-10年に従来のコットンの生産量を超えていますが、その後また生産量が落ちているという事実が見て取れます。こちらの原因等はまた別の機会にまとめていきます。

世界的に見ると、まだまだ少ないオーガニックコットンの生産量。そもそも、従来のコットンの何がそんなにいけないのでしょうか?

従来のコットンの問題点

畑に農薬を散布する農家引用:Image by zefe wu from Pixabay 

以下では、従来のコットン栽培における地球環境への影響、農家への影響、消費者への影響などをまとめます。

土壌・水質の汚染を招く

従来のコットン栽培では、肥料、枯葉剤、殺虫剤等多くの農薬を使用します。枯葉剤は、収穫時に葉が混ざってしまうと品質が悪いコットンとされてしまうため、収穫前にわざと葉を落とすために使用されます。コットンの農地は世界全体の農地の約2.5%に過ぎませんが、世界中で使用される殺虫剤の約16%がコットン畑で消費されています。

これらの化学薬品を使い続けると、土地はやせ細り、土壌中の微生物等の生態系にも影響を与え、栄養がなくなっていき、農薬に頼らなくては作物が育たない土地になってしまいます。結果として、農家の生産コストも上がります。

農家への健康被害

インドのコットン農家Image by Sanjeev Rohilla from Pixabay 

農薬を使用することにより、農家の人体への健康被害が出ています。2017年には、インドのコットン栽培地域で、協力な殺虫剤を使用した結果健康被害が出たと疑われる人々が続出しました。その結果、視覚障害を患ってしまう人や亡くなってしまう人もいました。

遺伝子組み換え種子の浸透による農家の困窮

大企業による農薬ありきの遺伝子組み換えコットン種子が浸透している地域では、その種子が特許で守られているため、翌年も同じ種子を使うことはできず、農家は毎年種子と農薬を購入しなければなりません。そのため、コットンが不作になった翌年は借金をして種子や農薬を買う農家も多く、次第に資金繰りが厳しくなり借金の返済の目処がたたずに自殺に至ってしまう農家もあとを絶ちません。

オーガニックコットンのどこがエシカル?

環境に優しい女性Photo by Nikola Jovanovic on Unsplash

さて、通常の農薬で育てられたコットンの問題点を述べてきました。それに対して、オーガニックコットンはどこがエシカルなのでしょうか?そもそも、エシカルとは英語で「倫理的」という意味で、最近の文脈では「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動のこと(引用:一般社団法人エシカル協会 」を指します。

農薬や化学肥料の厳格な基準

従来のコットン栽培と異なり、農薬や化学肥料の使用に関して厳格な基準が設けられているため、農家への健康被害は軽減されます。また、土壌中の生態系を維持し、土壌がやせ細ることを防ぎます。

遺伝子組み換え種子の禁止

オーガニックコットンの認証制度では、遺伝子組み換え種子を禁止しているところもあります。そのため、遺伝子組み換え種子を利用することによって生じる農家の困窮や自殺などを防ぐことにつながります。

児童労働の禁止

GOTS認証などのオーガニックコットンの認証を取得している製品においては、児童労働の禁止や衛生的な労働環境の確保が担保されています。

オーガニックコットンの問題点はあるか?

そんなオーガニックコットンですが、問題点はないのでしょうか?

従来のコットンよりも水使用量が高い?

とある調査によると、オーガニックコットンの栽培には、従来のコットンよりも多くの水が必要になるという結果も出ています。

従来のコットンとオーガニックコットンで必要な水の量の比較引用:https://qz.com/990178/your-organic-cotton-t-shirt-might-be-worse-for-the-environment-than-regular-cotton/

どういうことかというと、同じ面積の畑があったときに、オーガニックコットンは従来のコットンよりも収穫できる繊維の量が少なく、同じ繊維量をとるためにはより広い面積が必要になるということです。よって、上記のグラフのように、一着の服を作るために必要なコットンを栽培する場合に必要な水の量はオーガニックコットンの方が多くなる、とここでは指摘しています。

農家にとって始めるハードルが高い

いざ、コットン農家の方がオーガニックコットンを始めたいと思っても、簡単には移行できないのが現実です。そもそも、オーガニックコットンの農地として認証してもらうまでには、2-3年これまでのやり方と変えての栽培が必要になります。しかし、害虫にやられてしまう、農薬に頼らない栽培方法がわからない、遺伝子組み換えをしていない種子が手に入らないなど、わからないことがたくさん存在します。

そのような農家のために取り組んでいる日本企業もいます。伊藤忠商事とkurkku alternativeが共同で行っている「POC(プレオーガニックコットンプロジェクト) 」です。上記のような問題に直面している農家の方をサポートし、移行期間中に収穫したコットンを買い付けています。つまり、扱っているのはオーガニックコットンではなく「プレ」オーガニックコットンの名の通り、オーガニックコットンと認証される前のコットンです。

様々な理由でオーガニック認証を受けられない農家の方を応援する意味でもプレオーガニックコットンはとても意義があるものだと思います。

まとめ

今回は、オーガニックコットンが本当に良いのか?エシカルなのか?についてまとめてきました。水資源の使用量については、従来のコットンとどちらが環境負荷が低いかという議論が行われており、双方の意見が存在していることがわかりました。完璧な答えがあるわけではないのが環境問題ですが、オーガニックコットンの問題点については今後も注視していきたいと思います。

  • https://www.bbc.com/news/world-asia-india-41510730
  • http://joca.gr.jp/main/what-organic-cotton/
  • https://organiccotton.org/oc/Cotton-general/Impact-of-cotton/Risk-of-cotton-farming.php
  • https://qz.com/990178/your-organic-cotton-t-shirt-might-be-worse-for-the-environment-than-regular-cotton/

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