知識

生分解性プラスチックとは?本当に自然に還る?

生分解される落ち葉

土や海、自然に還るプラスチックを、生分解性プラスチックと呼びます。しかし、生分解性プラスチックのはずなのにいつまで経っても分解されないという話もよく聞きます。どういうことなのかまとめてみました。

生分解性プラスチックとは?

土に還るプラスチックカップImage by Andrew Martin from Pixabay

まず、「生分解性プラスチック(別名、グリーンプラとも呼ばれます)」について。生分解性とは、化合物が菌類やバクテリアによって無機物に分解される性質のことを言います。生分解性プラスチックは、プラスチックの使用後に微生物等によって、最終的に水と二酸化炭素に分解されるプラスチックのことです。なぜこのような土に還るプラスチックが開発されたのでしょうか?

元々プラスチックは、安価にあらゆる形状に加工できること、また耐久性も高いことから重宝されてきました。しかし、その耐久性の高さゆえに、使用後にもその原型を留め地球上からなくならず埋め立て処理地を逼迫させてしまうという問題点が出てきました。また、プラスチック製のストローが鼻に刺さったウミガメや、大量のビニール袋を飲み込んでしまい餓死したクジラなど、近年では海洋プラスチックの問題も大きくなってきています。このような問題に対して、1980年代頃から生分解性プラスチックの研究が進んできています。

【アートから知る】海洋・マイクロプラスチック問題「ペットボトルよりもマイボトルを持ち歩こう」「ビニール袋を断ってエコバッグを持っていこう」 プラスチックを削減する動きは少しずつ社...

生分解性プラスチックとバイオプラスチックの違い

バイオマスの燃料となるトウモロコシPhoto by Christophe Maertens on Unsplash

同じような文脈で、「バイオマスプラスチック」「バイオプラスチック」なども聞き覚えがあるかもしれません。それぞれの違いについて見ていきましょう。

バイオマスプラスチックは、資源枯渇や地球温暖化といった問題を背景に作られたプラスチックです。プラスチックは通常石油を原料としていて、再生が不可能な限りある資源の利用を加速させてしまいます。一方でバイオマスプラスチックは、サトウキビやトウモロコシ等再生可能なバイオマスを原料とし、また焼却時にも二酸化炭素濃度を上昇させません。

バイオマスプラスチックはさらに、生分解性のあるものと、ないものの2種類に分けられます。つまり、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは必ずしも一致しません。

生分解性プラスチックもまた、石油を原料として作られたものとバイオマスを原料として作られたものの2種類に分けられます。バイオプラスチックとは、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック両方の総称です。

生分解性プラスチックの用途

漁業の漁網Photo by David Clode on Unsplash

中々普及の進まない生分解性プラスチックですが、どのような製品に使用されているのでしょうか?環境中で微生物や菌類に分解されるその特性から、生分解性プラスチックは、自然環境の中で使用されているプラスチック製品の代替として期待されています。例えば、漁業に使用される漁網や釣り糸、農業用の移植用苗ポットやマルチフィルム、土嚢、マリンスポーツ用品等です。

なぜ自然環境の中で使用されるプラスチックが従来のものだと問題があるのでしょうか?実は、プラスチック製品は、雨風や日光にさらされる中で徐々に摩耗していき小さなプラスチックの粒子(マイクロプラスチック)が土壌や海に流れ出ているとされています。

そのようなマイクロプラスチックは、その後の回収はほぼ不可能で地球上に存在し続けます。さらにそれを魚や貝が体内に無意識に取り込むことにより、その魚や貝を食べる人間の体内にもマイクロプラスチックが溜まっていきます。これを生分解性プラスチックに変えることによって、マイクロプラスチックとして環境中に流出したとしても無害なものに分解することが可能になるのです。

また、使用後のリサイクル・回収が困難な製品についても、生分解性プラスチックを使用する意味合いが高いと言われます。例えば、食品包装のフィルムや容器・紙おむつ・生理用品・歯ブラシなどです。最近では、ストローやゴミ袋、カップなど家庭用の商品でも生分解性プラスチックを使用すすものも増えてきました。これらを生分解性プラスチックに変更することにより、焼却後に分解され埋め立て地の逼迫を防ぐことができます

生分解性プラスチックの難点

ビジネスの難しさImage by Dirk Wouters from Pixabay 

しかし、そんな生分解性プラスチックにも難点があります。

普及が中々進まない

生分解性プラスチックにしても、バイオマスプラスチックにしても、バイオプラスチックは中々普及が進んでいません。日本で毎年約1,100万トン使用されるプラスチックのうち、たったの0.4%しかバイオプラスチックは使用されていません

その理由は、生分解性プラスチックの製造コストの高さにあります。日本バイオプラスチック協会のサイトにもこのように記されています。

以前に比べると安くはなりましたが、それでも通常のプラスチックに比べると高い価格です。それゆえに、製品が出回らない⇒量産効果が出ない⇒コスト削減が進まない、といった悪循環下にあります。
また、コンポスト化施設などの社会インフラの未整備や、一般消費者にとって“実利が見えない”ことなども普及テンポが遅いことの一因となっています。

引用:http://www.jbpaweb.net/gp/gp_faq.htm

製品を使用中に分解が始まってしまう可能性

生分解性のプラスチックは、元々のプラスチックの利点であった耐久性が損なわれています。そのため、製品を使用している間に分解が始まってしまう事例も出ています。

2000年〜2007年にかけて、東京の町田を始め全国複数の自治体が生分解性プラスチックを使用した印鑑登録証等のカードを発行しており、SNSに分解が始まったカードが投稿され注目を集めました

分解速度や分解が始まるタイミングのコントロールが通常のプラスチックに比べて難しいというのも生分解性プラスチックの特徴です。

分解には特定の条件が必要

土壌Photo by Markus Spiske on Unsplash

使用中に分解が始まってしまう例もあれば、分解されずにいつまでも残っているとする調査も出ています。ある研究によると、3年間地中や海中に放置しておいた生分解性プラスチックのビニール袋が一向に分解されずに出てきた そうです。

なぜ分解されないのでしょうか?実は、生分解性プラスチックと一言に言っても、元となる原料や製法が違いバイオPBS、ポリ乳酸、PHBHなど様々な種類があります。そして、その種類によって、水中で分解されやすいもの・されにくいもの、コンポスト等の高温多湿で分解されやすいもの・されにくいもの、土中で分解されやすいもの・されにくいものなど分解が進む条件が異なります

例えば、PHBH(ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)は、水中で分解されやすく、バイオPBSはコンポストや土壌環境では分解されますが、水中では分解されにくい。そして、よく聞くポリ乳酸は、高温多湿のコンポストでは分解が進みますがそれ以外ではあまり分解が進みません。

しかし、使用する私達がそれを把握するのは困難であり、そのわかりづらさ故に処理方法を誤ってしまう可能性があります。

まとめ

今回は、生分解性のプラスチックとは何か、その用途や難点についてまとめてきました。まだまだ身近なところで見たことがない生分解性プラスチック製品ですが、見かけたら積極的に使用してみたいですね。