「ペットボトルよりもマイボトルを持ち歩こう」「ビニール袋を断ってエコバッグを持っていこう」
プラスチックを削減する動きは少しずつ社会に根付いてきています。しかし、なぜそこまでする必要があるのでしょうか?
今回は、アーティストのクリス・ジョーダンさんの作品をもとに、海洋プラスチック問題について考えていきます。写真は少しショッキングかもしれませんのでご注意ください。
アーティスト、クリス・ジョーダンとは?

引用:https://bit.ly/2XeM1Kx
クリス・ジョーダンさんは、アメリカシアトルを拠点に活動するアーティスト・写真家です。現代の行き過ぎたプラスチック文化や、大量消費社会へ対するアートワークを主に行っています。
2003年、クリス・ジョーダンさんが注目されたきっかけは、『Intolerable Beauty』という作品でした。大量にスクラップされた車やリサイクルを待つ大量のプラスチックなどの写真を撮り、アメリカの大量消費社会を表現しました。
そんな中で、今回はクリス・ジョーダンさんが長く撮影に取り組んでいるアホウドリの生態です。
クリス・ジョーダンのアホウドリから見えるもの

引用: https://bit.ly/2zLRTmh
こちらは、『Midway: Message from the Gyre』という作品に含まれる写真で、北太平洋のミッドウェー島で撮影されたアホウドリの死骸です。腹部にあるカラフルなものは、すべて海を漂っていたプラスチックの破片です。
この辺りは、太平洋ごみベルトと呼ばれており、海に流れ出た大量のゴミが海流によりたどり着きます。アホウドリは、海面に浮かぶイカなどを捕食しようとして、誤ってプラスチックを飲み込んでしまいます。これはアホウドリだけに言える話ではなく、現在生存する海鳥の約90%が、プラスチックごみを誤って食べている可能性があるという研究もあります。
海に漂うプラスチックを餌だと勘違いした親鳥は、それを雛鳥に与えます。親鳥は誤って食べてしまったものを吐き出すことができますが、雛鳥はそれができずに窒息死してしまうこともあります。また、プラスチックには添加物や有害物質が付着しており、それらは生物の体に蓄積していきます。
悲惨な現実ですが、これに対して、海に漂うゴミは自分とは関係ないという方がほとんどではないでしょうか。多くの人がきちんとゴミの分別をしてリサイクルに出しているし、ポイ捨てもしていない。ではなぜ海洋プラスチックが発生するのでしょうか?
海洋プラスチック発生の原因
Photo by Brian Yurasits on Unsplash
まず、海に漂い始めるプラスチックの形状は大まかに2種類に分けられます。一つは、ビニール袋やペットボトル、漁業に使用される網など元の形状が保たれている大きなもの。もう一つは、マイクロプラスチックという5mm以下のサイズのプラスチックです。
1つ目のペットボトルやビニール袋など容器包装に関して、これらは多くの人がゴミ箱へ入れ捨てているはずです。しかし、一部の人がポイ捨てをする、コンビニなど街の中のゴミ箱が溢れゴミが飛んでいき排水溝や川に流れてしまう、カラスやその他の動物によりごみ袋が破られ正しく収集されない、一部の業者による不法投棄が存在する、など原因は様々です。
また、日本ではあまり見ることがありませんが、筆者がよく行くインドでは、上の写真のように街中を流れている川はゴミにあふれ常に悪臭が漂っています。ごみをゴミ箱に捨てるという習慣や規律がない国も多く、そういった国の河川からも多くのプラスチックゴミが流れ出ています。
2つ目のマイクロプラスチックに関してですが、これらは私達が無意識のうちに生活の中で排出してしまっているものも多いのが現実です。
例えば、合成繊維が使用された洋服を洗濯した際に、マイクロプラスチックが一緒に流れ出てしまうことがわかっています。特にフリースは洗濯をするたびに、何千という小さな繊維状のプラスチックが排水と共に流れ出ていきます。
Photo by Andreas Fickl on Unsplash
また、スクラブ剤の配合してある歯磨き粉や洗顔料などにもマイクロプラスチック(マイクロビーズ)が含まれており、洗面台から排水されていきます。
これらは下水道へ流れて処理場に流れ着き、その多く(約95%〜99%)は他の固形物と一緒に沈殿して除去されますが、残りは除去されずに海へと流れてしまいます。また、台風や土砂降りなどで下水処理が容量を超えると除去されず川や海に流れ出してしまうこともあります。
その他、人工芝や野外に置かれたプラスチック製品は雨風や紫外線にさらされ劣化していくに連れて、マイクロプラスチックが流出していきます。それらが雨で流され川に合流します。
このようにして、プラスチックは様々な経路で海へ流れていきます。陸から海へ流入するプラスチックは年間800万トンで、海には50兆個以上のマイクロプラスチックが漂っていると言われています。
海洋プラスチックによる被害
Image by Kees Kortmulder from Pixabay
まずは、海洋プラスチックに起因する生物への被害です。上述したように、海鳥やウミガメ、クジラなど多くの海洋生物がプラスチックを誤飲して生物の命が危険にさらされています。また、それにより生態系全体への影響も懸念されています。
上述した太平洋ゴミベルトに浮かぶゴミを調べた結果、ゴミの総量は7万9000トンとされ、そのうち約46%が漁業関連のゴミだったといいます。漁業の網に絡まり怪我を負う、窒息死する等の被害を受ける海洋哺乳類は、毎年10万頭にのぼります。
Image by Engin_Akyurt from Pixabay
生物が被害にあっている一方で、人間に対する影響も出てきています。マイクロプラスチックは微細なかたまりのため、魚や貝などの小さな生物も体内に取り込みます。それらを人間が食べることで人間の体内にもマイクロプラスチックが蓄積されていると言われています。
そもそも魚や貝以前に、水道水や市販のミネラルウォーターの中にもプラスチックが含まれているとされ、オーストラリアの研究チームによると、2019年時点で世界中の人が1週間にクレジットカード1枚分の重さ(5g)のプラスチックを摂取しているとされています。
プラスチックには製造時に添加された難燃剤や抗菌剤等が含まれています。またプラスチックは、海水を漂う有害物質を吸着しやすいため有害物質が含まれます。これらの海鳥や人体への影響についての研究医は発展途上となっています。
私達にできること
Photo by Juan Pablo Serrano Arenas from Pexels
海へ出るプラスチックを減らすために私達にできることは何でしょうか?プラスチック製品をリユースする、リサイクルすることも大事ですが、1番大事なのはリデュース(減らす)することではないでしょうか。
そもそも、マイクロプラスチックは海洋に出てしまうとその小ささから回収は非常に困難です。プラスチックは石油からできているため自然界で分解されずに何十年も海をさまよい続けます。
レジ袋を断る、マイボトルを持ち歩く、プラスチック容器に入ったお菓子や弁当をできるだけ避けるなど日々の生活の中で一人ひとりがプラスチック消費量をへらすことで海に流れ出てしまうプラスチックの総量を削減することができます。

まとめ
今回は、クリス・ジョーダンさんのアートを通じて海洋プラスチック問題についてまとめてみました。プラスチックが体内にも蓄積されているということに驚いた方も多いのではないでしょうか。日々の生活の中でプラスチックをへらす方法を考えるきっかけになればと思います。
- 高田秀重(2019)「海洋プラスチック汚染とその対策」
- NATIONAL GEOGRAPHIC(2018)太平洋ゴミベルト、46%が漁網、規模は最大16倍に
- FRaU │ SDGs Mook OCEAN │ 海に願いを。講談社 2019